2022年に劇場公開された『ナイトメア・アリー』の予告編動画は、こちら
その「見世物小屋」では、得体の知れない人間?生き物?を見世物にしていた。
そして一見、華やかなショービジネスの裏側では、陰謀を企む連中がいた。
『ナイトメア・アリー』は、アカデミー賞監督のギレルモ・デル・トロ監督が仕掛けた傑作サイコ・スリラー。
その見世物小屋は?
1939年・・・浮浪者のスタン・カーライルは流れ着いた見世物小屋で、獣人(ギーク)と呼ばれる男が生きた鶏を貪り食う見世物を見物する。
その後、スタンは見世物小屋で日雇いの仕事を見つけるが、その日の夜に獣人の逃亡事件が発生した。
スタンは獣人を捕獲したことでオーナーのクレムの目に留まり、そのまま見世物小屋の一員として雇われ、透視の手品をするジーナと夫ピートの助手を務める。
また、スタンはクレムから、行き場を失った浮浪者を洗脳して獣人に仕立て上げる方法を聞き出していた。
しかし、その術を悪用して正常な判断力を失ってしまう危険性を理解して、クレムは人前で披露することを止めていた。
そして、読心術のテクニックを身に着けたスタンは一座から独立し、瞬く間にトップの興行師と上り詰めるのだが…その先には思いがけない闇が待ち受けていた。
人間の内に潜む怪物性
『ナイトメア・アリー』は、人間なのか獣なのか 正体不明な存在の“獣人”をテーマに据え、ある秘密を抱えた男が怪しげなカーニバルの一座と巡り合い、ショービジネスの才能を開花させていく物語。
栄光と破滅、裏切りに駆け引き、そして因果応報・・・人間の内に潜む怪物性に踏み込んだ本作は、闇深くもありながら極めて上質な名作といえます。
甘美な異界!
『ナイトメア・アリー』の”nigohatmare”は「悪夢のような出来事」の意味です。
本作は、1946年に出版されたノンフィクション作家ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの同名の小説「Nightmare Alley」を原作とします。
映画『ナイトメア・アリー』の、最大の見どころは魔訶不思議な見世物小屋のセット!
そこに広がるのは、極彩色で彩られた まがまがしくもある甘美な異世界。
移動式遊園地を丸ごと作ってしまったというから、そのスケールの大きさに圧倒されます。
そのほか、1930~40年代のアメリカの都市部を空気感に至るまで完全に再現。
怪しげな雰囲気漂うカーニバルから、エレガントな上流階級の暮らしまで、アカデミー賞受賞メンバーが作り出した一部の隙もない世界観が見事です。
『ナイトメア・アリー』は、ショービジネス界の華やかな光と甘美な闇・・・そして心を狂わせる怪しくも華麗な迷宮が観る者を誘う映画です。
容赦のない物語
本作は『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パンズ・ラビリンス』など、幻想的かつ悪夢要素も絡めたダークファンタジーを次々と生み出してきたギレルモ・デル・トロ監督が目に、耳に、頭脳に容赦なく描き込むサスペンススリラー。
トップスター夢の競演!
野心にとりつかれていく主人公スタンを『アメリカン・スナイパー』や『アリー スター誕生』のブラッドリー・クーパー。
独特のカリスマ性を発揮しながらも、どこか軽薄で危うさが漂う人間臭いキャラクターを見事に演じきっています。
そして、彼を取り巻くのはいずれも主役級の面々。
『キャロル』で、運命のふたりに扮したケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが、今回はスタンと共謀する博士と彼に恋したばかりに騒動に巻き込まれていくカーニバルの一員を演じる。
刺すようなブランシェットのクールで凍てつく様な存在感・・・そして幽玄な雰囲気を醸し出したマーラの競演にも注目です。
さらに、『ヘレディタリー 継承』で世界にトラウマを植え付けたトニ・コレットがクセの強い演技を見せつけ、『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』のウィレム・デフォーが、カーニバルのヤバサ十分の団長役で魅せます。
そのほか、『ナイトメア・アリー』のリチャード・ジェンキンスに『ヘルボーイ』のロン・パールマンら、デル・トロ組のメンバーも集結。
『ナイトメア・アリー』あらすじ
ショービジネスでの成功を夢みる野心にあふれた青年スタンは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座とめぐり合う。
そこで読心術の技を学んだスタンは、人をひきつける天性の才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師となる。
しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた。
エグいほど心に残るサスペンス!
なんといっても、うさん臭さが充満する往年のアメリカ・ショービジネス界が見どころ。
描かれるのは、観客を手玉にとりボロい手口で商売をしてきた男の人生映画と思いきや、
男に絡んでくる女性の方が主人公を手玉に取っていくような流れに見えます。
これまで数々のモンスターに対する愛を描いてきたデル・トロ監督が、「本当におぞましく、真の意味でモンスターなのは・・・人間なのでは?」と、思わせてくれます。
作品概要
製作国:アメリカ
監督:ギレルモ・デル・トロ
上映時間:150分
劇場公開日:2022年3月25日
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