17世紀、宗教的な偽りや矛盾に満ちた社会の中で、奇跡を起こす能力を持つ修道女ベネデッタ・カルリーニの物語を描く『ベネデッタ』は、宗教とセクシュアリティの複雑な関係を描いた衝撃的な伝記映画です。
彼女は聖痕や奇跡を通じて民衆から崇められましたが、同性愛の罪で裁判にかけられることになります。
この映画は、当時の宗教や教会の複雑な内部構造を描き、その批判が物議を醸し出し、キリスト教団体からの猛烈な反発を受けました
2023年2月に劇場公開された『ベネデッタ』の予告編動画は、こちら
17世紀に実在した修道女ベネデッタ・カルリーニは、聖痕や奇跡を起こし民衆から崇められた・・・しかし修道院長に昇りつめた時、同性愛の罪で宗教裁判にかけられた。
『ベネデッタ』は、鬼才ポール・バーホーベンが教会の欺瞞を挑発的に描く奇想天外のセクシャル・サスペンス。
男尊女卑の社会
中世のヨーロッパはキリスト教の力が強く、多くの民が教会の戒律に従って生活を送ることを強制されていた時代。
特にこの時代の女には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、⼦供を産むだけの存在とみなされていたのです。
そんな完全に男が支配する社会で、修道女ベネデッタは才能・幻視・狂⾔・嘘・創造性で修道院長へと昇りつめ、本物の権力を手にしていく。
聖女か魔女か!?
裕福なカルリーニ家の一人娘ベネデッタ・カルリーニは、幼少期から“奇蹟をおこす少女”として地元で有名だった。
修道院に入ってからも、ベネデッタはマリア像が倒れて下敷きになっても怪我一つせず、マリア様の声やキリストのビジョンを見続け、ついには両手両足に聖痕が現れる!
教会の欺瞞と愛の物語
これを利用して民衆の心をつかもうとする教会の役人たちにより、ベネデッタは新しい修道院長に祭り上げられることになった…教会は、宗教をビジネスとしてしか捉えていない。
しかし聖痕や奇蹟を起こし民衆に崇められた一方、彼女は同性愛の罪で裁判にかけられた。
修道院長となったベネデッタ・・・そこに現れたのが貧しい少女バルトロメアで、父の虐待から逃れ修道院に駆け込んだ彼女を、ベネデッタが面倒を見ることになるが、やがてバルトロメアとベネデッタは禁忌である同性愛関係をもつようになり宗教裁判にかけられたのです。
実話から着想の物語
当時の宗教や教会の内部と権力争いと人間関係など「実話から着想を得た物語」です。
カンヌ国際映画祭騒然!
これまで、修道女のコミュニティは一般社会的には内部が見えず、表面上は敬虔に振舞っているので、実は何か隠しているはずだという猜疑心や、その内側を知りたいという覗き心があり修道女を描いた作品は要注目です。
反骨巨匠の歴史大作
稀代の映画作家ポール・バーホーベンは、『ロボコップ』や『トータル・リコール』『氷の微笑』『スターシップ・トゥルーパーズ』などその過激な暴力描写・性表現で知られる監督で、
いずれも一癖も二癖もある作風を好み、我が道を突き進んでいくスタイル。
2017年公開の『エル ELLE』も、相当に尖った一作で「批評家が衝撃・困惑した」と騒然させていました。
キリスト教団体からは猛然と苦情!
『ベネデッタ』は、17世紀に実在した修道女ベネデッタの数奇な運命と彼女に翻弄される人々を描き、宗教とセクシュアリティ・教会の政治的駆け引きなどを見事なバランスで描いた衝撃的な伝記映画です。
製作後は世界的コロナのパンデミックの影響で延期、3年後の2021年に公開されました。
公開後は、もちろん反LGBTQなキリスト教団体からは猛然と苦情が殺到したようです。
出演は「おとなの恋の測り方」のビルジニー・エフィラが主演を務め、ダフネ・パタキアや「さざなみ」のシャーロット・ランプリング、「神々と男たち」のランベール・ウィルソンが共演。
『ベネデッタ』あらすじ
17世紀のイタリア・トスカーナ地方の町ぺシア。
幼い頃から聖母マリアと対話し、奇跡を起こす少女とされていたベネデッタは、6歳で出家しテアティノ修道院に入る。
18年後・・・純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日 修道院に逃げ込んできた若い女性・バルトロメアを助ける。
それ以降、様々な心情が絡み合い二人は秘密の関係を深めていく。
同時期にベネッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任した。
民衆には聖女と崇められペシアでの権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。
そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、ペシアの町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた…。
キャスト
ビルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、ランベール・ウィルソンなどが出演。
成り上がり修道女の生きざま
本作の見どころは、主人公・ベネデッタのスリリングな大立ち回りっぷり!
倒れてくるマリア像、数々の幻視と聖痕、望むべきは信仰か権力欲か、起こしたのは奇跡か狂気か、ラストまでベネデッタの真意はわからない。
『ベネデッタ』は、反骨の巨匠ポール・バーホーベン監督らしい渾身の歴史大作。
作品概要
製作国:フランス・オランダ・ベルギー合作
監督:ポール・バーホーベン
上映時間:132分
劇場公開日:2023年2月17日
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