映画『トレーニング・デイ』は、2001年に劇場公開された緊張感あふれるクライムドラマです。
デンゼル・ワシントンが演じるベテラン刑事アロンソと、イーサン・ホークが演じる新人刑事ジェイクの24時間に渡る危険で試練に満ちた日を描いています。
この作品は、警察内部の腐敗と道徳的ジレンマを鮮明に浮かび上がらせ、観る者に強い印象を残します。
2001年に劇場公開された『トレーニング・デイ』の予告編動画は、こちら
新人刑事ジェイクは、ベテラン刑事のアロンソとコンビを組み麻薬捜査のイロハを教え込まれる・・・しかし、アロンソは犯罪摘発のために いともたやすく自ら法を犯していく。
「ワーナー・ブラザース創立100周年」を記念し、ワーナー・ブラザースの100年の歴史を飾った作品が、世代を超えて35mmフィルムでリバイバル上映。
新米捜査官の一日研修
真面目な交通課のお巡りさんジェイク・ホイトは、麻薬捜査班に抜擢され喜んでいた。
彼の目標は麻薬捜査官として認めてもらい、刑事になって出世したいのだ!
彼は勤務初日に、ベテラン捜査官アロンゾ・ハリスに同行して、麻薬捜査のイロハを教え込まれることになった。
ジェイクはベテランの麻薬捜査官アロンソに憧憬を抱き、手本にしようとする。
その研修は汚職警官スタイル!
その日、ベテラン捜査官アロンゾはジェイクの新人研修と称して、ギャングの横行する危険な地帯をクルージングする。
しかし アロンゾの行動は、暴行、脅迫、証拠ねつ造と次第にエスカレートしていく。
嘘の令状で家宅捜査をしたり、銃撃戦をしたりとメチャクチャな捜査をする。
正義の理想と信念に燃えていたジェイクは、アロンゾの暴力的で型破りな捜査に疑問を抱きつつも「アロンゾ流」の捜査に何とか ついていこうとする。
常軌を逸したトレーニング・ディ
最初の仕事は麻薬密売の摘発だ!摘発後にアロンゾはジェイクに押収した麻薬を吸わせようとする・・・“吸ってみろよ~”と強要する。
“いやですよぉ~、それまずいですって!” と、ジェイクがかたくなに断るとアロンゾは交差点の真ん中に車を止めて、なんと!ジェイクの頭に銃を突きつけた。
そしてアロンゾは叫ぶ “組織に潜入中ヤクを断ってみろ。一発でサツだとバレてあの世行きだ。吸えないなら交通課のおまわりに戻れ” と。
『トレーニング・デイ』は、ロスを舞台に新人麻薬捜査官とベテラン麻薬捜査官の1日・・・トレーニング・デイ(訓練日)を描いたサスペンス・アクション!
人気のバディムービー
これまでの映画の歴史では、最初はチグハグな関係の凸凹コンビの刑事二人組が、次第に信頼関係を築いて事件を解決する作品が多くありました。
SF『メン・イン・ブラック』(1997年)では、黒いスーツに身を包んだ男「KとJ」が、地球上にいるエイリアン達が侵略行為に出ないように監視する姿がコミカルに描かれました。
『リーサル・ウエポン』(1987年)では、ロサンゼルス市警で良き家庭人の刑事と、自殺願望を抱くが故に命を顧みぬ捜査をする刑事との、過激なアクションが展開されました。
『ラッシュアワー』(1998年)は、ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの刑事コンビがコメディとアクションを交えながら事件を解決するバディムービーで大ヒットしました。
他にも、ハードクライムの『ケープタウン』(2013年)や、凸凹コンビの『バッドボーイズ』(1995年)など、二人が組めば面白さも倍増する刑事バディムービーが公開されています。
異色のバディムービー!
一般的な刑事コンビ映画は、ベテラン刑事と新人刑事の組み合わせというバディムービーにありがちな設定が多く、本作はラストで二人が対立を乗り越えて仲良くなるようなことはなく、むしろ対立が決定的決裂に至る点で他のバディムービーとは全く異なっています。
デンゼルの超ワル悪役演技
これまで善良で知的な役を多く演じてきた名優デンゼル・ワシントンがこの映画では、それまでのキャリアでは考えられないタイプの徹底した超悪役に挑戦しています。
悪役といってもマフィアのボス級のワルとか、事件の黒幕的な悪役ではなく、あくまでも品性を疑うような、裸の王様的タイプの露骨でカッコワルイ悪役です。
デンゼル・ワシントンは本作の悪役刑事演技で、史上二人目のアフリカ系アメリカ人としてアカデミー主演男優賞を受賞!
黒人俳優で史上初のアカデミー主演男優賞及びゴールデングローブ賞 主演男優賞 は、1963年公開の映画「野のユリ」で主演したシドニー・ポワティエさんです。
俺は悪を倒す捜査官だ!
この映画のもう一つの見所、それはイーサン・ホーク演じる青臭い新人捜査官ジェイクのドン引きぶりで、先輩刑事の捜査の仕方に戸惑うばかり!?
汚職警官である先輩の振る舞いに振り回され、法と正義を訝ることになる。
彼は麻薬捜査官になって出世しようという目的あったが、基本的には悪を倒し正義を貫く熱血漢・・・そんな彼がワルに抗いながら悪に挑戦していく姿が見どころ。
捜査部隊の汚職事件が発端
本作の脚本はデヴィッド・エアーが執筆しましたが、後にロサンゼルス市警察の捜査部隊「CRASH」における同等の汚職事件が発覚しました。
監督は、この事件が映画の製作を推し進めるきっかけとなったと語っており、デンゼル・ワシントンは、事件の中心人物であったラファエル・ペレス巡査を演技の参考にしました。
ペレス巡査は、押収されたコカインの窃盗・転売など、数多くの犯罪に関与していたのです。
ギャングの縄張りで撮影
この映画ではロスのギャングストリートの迫力が、リアルに伝わってきます。
映画の撮影も実際の街角で行われ、現地では区画によってさまざまなLAギャングの縄張りがあり、その縄張り内での撮影になるためギャングと話を付ける必要がありました。
現在のロサンゼルスには、LAギャングによる犯罪多発地域や危険エリアを示したヒートマップがあり、青が濃くなればなるほど危険度が高い場所と印されています。
35mmフィルム上映の魅力
「ワーナー・ブラザース創立100周年記念上映 “35ミリで蘇る ワーナーフィルムコレクション” selected by ル・シネマ」が東京の映画館で開催され、ワーナー・ブラザースの100年の歴史を飾った作品として、当時の35mmフィルムでリバイバル上映されました。
35mmフィルム上映企画者は “素材が古く、フィルムに多少の退色や傷は否めない作品もあるかもしれません。
しかし、その傷自体が映画の記憶を感じさせるように、フィルム上映の魅力は自身の記憶に近い映像と空気感、そして奥行きだと思います” と言っています。
また「公開20周年」の節目を迎えた『トレーニング・デイ』は、第46回トロント国際映画祭では公開20周年を記念した特別イベントが開催され監督やイーサン・ホークが出席し当時の撮影を振り返りました。
『トレーニング・ディ』あらすじ
ロス市警の交通課 若手警官ジェイク・ホイトは、憧れだった麻薬捜査課に配属される。
ジェイクは社会から危険な薬物犯罪をなくしたいとして、麻薬捜査官を志したのだ。
彼は、真面目で正義感があり 警察官としての振る舞いや、あるべき姿勢を重視する。
その初日は、麻薬課のチームリーダーを務めるアロンゾ・ハリスに同行し、実際の麻薬捜査の現場を体感することになった。
アロンゾはこれまで多くの犯罪を取り締まり、成果を上げてきたベテラン刑事だった。
新米刑事の長い1日が始まる…
ようやくつかんだチャンスだったが、同行しているうちにアロンゾのアウトローな捜査手法に戸惑いを隠せない。
アロンゾの捜査は小物の売人など眼中になく、脅迫し情報を得る見返りに逮捕を見逃す。
これも薬物犯罪の根っこにいる大物を叩くためだと「アロンゾ流」を教え込む。
だが、犯罪者は全員逮捕すべきだと考えるジェイクにとって、それはもどかしく反感を覚え
アロンゾのやり方に初めから疑問を抱いていく。
そのやり方は汚職警官風!
その後、アロンゾはただの紙を令状と偽り、麻薬の元締め・サンドマンの家を家宅捜索する。
適切な手続きをとり、本物の令状を取るよう求めるジェイクに、アロンゾは“ダメなもんか。警官なんだ。何だってできる”と突き返す。
加えて、捜索にかこつけ家にある麻薬売人の金を盗みもする!
“こんなのまともじゃない!どうかしてる!”と、ジェイクには驚きの連続だ。
ロスの街で一際危険なのが凶悪犯罪の温床となっている「ジャングル」と呼ばれる地区だ。
“ここは俺がにらみを利かせている” と語るアロンゾは、ジャングルの支配者気取りだ。
しかし、この地区に住むギャングらは、そんな傲慢な彼を快く思っていない。
アロンゾの暗殺計画!
アロンゾは個人的な恨みを買った事で、ロシアンマフィアから命を狙われることになった。
今日の夜0時までに100万ドルを用意し、その清算を図らなければ消されるのだ。
アロンゾは金の工面のために目をつけたのは、ロスで一番の大物の売人ロジャー。
アロンゾは長らく協力関係を築いてきたロジャーの家に捜査に押し入り、床下から400万ドルの大金を押収した。
その場で金の一部を部下の捜査官らと山分けし、悪徳を尽くしてきたアロンゾの秘密を知るロジャーもついでに射殺する。
ロジャーが先に発砲し応戦したという嘘のシナリオをでっち上げることで、お咎めはなしだ。
ジェイクは正義を振りかざす!
職務上の殺人と正当化するアロンゾにジェイクは言い放つ!“ロジャーの家で起こったのは殺人です。
それに強盗です。警察バッジを持ってると話が違うんですか!” と。
アロンゾは “奴はガキどもにドラッグを売ってた。奴がいなくなりゃ世の中はよくなる”
と理解を求めるが、そこに説得力はなかった。
遂に自身の捜査チームにジェイクを加えるのは不適当と判断したアロンゾは、ギャングにジェイクを始末させるよう仕向ける。
ギャングの襲撃から何とか難を逃れ、怒りに震えるジェイクはアロンゾのもとに向かい、激しい戦闘の末、ロシアンマフィアに渡す金を取り上げる。
2人のやり取りを見守るジャングルのギャングや住民らに、負傷のアロンゾは我が物顔で指図する。 “おいっ。真っ先にこいつを撃ちゃ金持ちにしてやるぞ!”。
失墜した悪徳王
だが、、誰も応えない・・・冷めた視線を彼に向けるだけだ。
金を取り上げられたアロンゾは、自分に加勢しなかったギャングらに激昂する!
“恩知らずの汚ねぇ野郎だ。クズどもめ!お前らの悪事片っ端からあげてやる。
全員ぶち込んでやるぞ!“
“俺はここじゃ天皇だ!二度と外には出られねぇぞ!相手が誰か分かってんのか。
俺は警官だ!こんなとこ叩き潰してやる“ とわめきたてる。
失墜した「悪徳王」の咆哮は ただただ虚しく夜の闇に響くだけだった
キャスト
デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、アントワーン・フ-クア、エヴァ・メンデス、トム・ベレンジャー、クリス・カーティスなどが出演。
わずか1日の出来事を濃密に描いた衝撃作!
一線を越えた犯罪者より危険なもの、それは一線を越えた刑事。
一応言ってることは筋が通ってるだけに、タチが悪いし手が付けられない!
ダーディーなデンゼルとルーキーのイーサン・・・二人の演技が素晴らしい!
腐敗した警察官をデンゼル・ワシントンがよく演じ、クソな組織に新人として入った正義漢をイーサン・ホークが演じる・・・このアンバランスさが実にリアル!
よくあるバディもの刑事映画かと思ったらと思ったら、思いもよらぬ展開に。
本作は、たった1日の新人研修を描いた作品ですが中身がたっぷり!見終わった後にふと「そういえばこれは一日の出来事なんだ」と改めて驚いてしまう映画。
作品概要
製作国:アメリカ
監督:アントワーン・フークア
上映時間:122分
劇場公開日:2001年10月20日
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