2021年11月に劇場公開された『アンテベラム』の予告編動画は、こちら
ルイジアナ州の農場で、南軍の白人男性たちに酷使される黒人奴隷たちの物語が始まる。
それは、過去が舞台のアメリカ歴史ドラマかと思ったら・・・物語は一転して現代に!?
『アンテベラム』は、華やかな日々を送っていた女性の転落と、ある黒人奴隷の運命が描かれる反転的なパラドックス・スリラー。
物語が始まると、思わず目を覆いたくなるようなシーンの数々が炸裂する!
米国ルイジアナ州では大きな綿花農場があり、そこで奴隷として扱われる黒人の人々が、南軍の白人男性から酷い差別を受けていた時代に遡ります。
更に奴隷たちの救いようがない悲惨な日々は続く・・・と思いきや! 突然シーンは転換し、画面に映し出されるのはスマホで、すでに現代の物語が描かれる。
本作の昔の物語では奴隷のエデン、現代の物語には作家のヴェロニカの二人の女性が登場します。
何かがおかしい?
それぞれの ありふれた日常のワンシーンのはずなのだが、何かがおかしい?
この違和感は『ゲット・アウト』や『アス』で感じた・・・それに似ている感じ。
しかも、各ショットやセリフには 本作のパラドックスをひも解くヒントが散りばめられているようだ?
そう! 本作は奴隷である女性エデンと、現代で人種差別問題に立ち向かう女性ヴェロニカ・・・この2つの物語が同時進行しているのです。
『アンテベラム』は、過去と現在を行き来しながら、奴隷農場で虐待されていた黒人女性が脱出のためにする死闘と復讐を描いた、パラドックス・スリラー映画。
『アンテベラム』のポスターに出て来る蝶々の模様が、映画の終始に象徴的に登場する?
黒人女性が唇を塞いでいる赤い蝶は、何を意味するのだろうか?
蝶々が血を流しているが、何故流しているのでしょうか?
そして、映画の原題「Antebellum」で、アルファベットのEは何故、反対方向に向きを変えているのだろうか?
何者かが “お前の自由は 我々のものだ”という台詞は、何を意味するのでしょうか?
人種差別と反戦がテーマ
タイトルの『アンテベラム』とは、アメリカ南北戦争直前の時代を意味する用語で、ラテン語では戦前を意味し、南北戦争前の時期に黒人奴隷たちを抑圧する南部白人たちの姿を描きながら、人種差別と反戦をテーマに描いています。
『アンテベラム』は、『ゲット・アウト』や『アス』のプロデューサーショーン・マッキトリックが放つ、パラドックス・スリラー!
主演は『ドリーム』で絶賛を博したアフリカ系アメリカ女優・歌手でもあるジャネール・モネイが本作にて奴隷役のエデンと、人気作家役のヴェロニカを一人二役で演じています。
キャラクターが異なる役を、どちらも体当たりの演技を披露しています。
『アンテベラム』あらすじ
南北戦争前のアメリカ・・・南軍の旗が掲げられたアメリカ南部のプランテーションでは、南軍の白人男性から黒人奴隷たちが酷い差別を受けていた。
ここに、囚われの身となった黒人奴隷のエデンは、過酷な労働を強いられていた。
脱走を試みた者は監視役に殺され、焼却炉で処分されるのだった。
エデンは屈辱と恐怖の日々を耐え忍びながら、脱出のチャンスを伺っていた。
やがてある悲劇をきっかけに、エデンは奴隷仲間と共に、脱走計画を実行するが・・・。
現代のアメリカ・・・社会学者で人気作家でもあるヴェロニカは、優しい夫、愛くるしい幼い娘との幸せな家庭を築き上げていた。
ある日、ニューオーリンズでの講演会に招かれた彼女は力強いスピーチで拍手喝采を浴び、その後 友人たちとのディナーを楽しむが・・・。
しかしその直後、ヴェロニカの公私共に輝きに満ちた日常は突然崩壊し、究極の矛盾をはらんだ悪夢へと反転するのだった。
時代と境遇がまったく異なる世界に生きる、ヴェロニカとエデンはそれぞれが突然引きずり込まれた理不尽な極限状態を呑み込むことができない!?
果たして、彼女たちを脅かす得体の知れないものの正体とは、何なのか?
そして、二人が生き延びるために解き明かさなくてはならないものとは、何なのか?
キャスト
ジャネール・モネイ、トンガイ・キリサ、ジャック・ヒューストン、エリック・ラング、ジェナ・マローン、カーシー・クレモンズ、ガボレイ・シディベ、マルク・リチャードソン、ロバート・アラマヨ、リリー・カウルズ、ロンドン・ボイス
仰天のどんでん返し!
本作で描かれる2つの物語は全く別物ではなく、観ているうちにどこかで交錯していく事が後に判明していく・・・正に、同時反転進行のパラドックス・スリラー!
『アンテベラム』は、ギリギリまでオチが隠されているのも良い部分で、まるで迷宮に入ってしまったような感覚がとても新鮮! そんな作品です。
作品概要
製作国:アメリカ
監督:ジェラルド・ブッシュ&クリストファー・レンツ
上映時間:96分
劇場公開日:2021年11月5日
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