2020年に劇場公開された『ザ・ヴィジル 夜伽(よとぎ)』の予告編動画は、こちら
ユダヤ教の信仰を捨てた青年ヤコブは、ユダヤ教の慣例である「死人の棺を一晩見守る」という役割・夜伽を、高額な報酬目当てで引き受ける。
しかし彼はその夜、謎の異音と共に恐怖の”何か”という存在と対峙していく。
『ザ・ヴィジル』は、オカルトに歴史的惨事が絡み合う異色オカルトホラー。
一晩「遺体に付き添え」と言われたら!?
ユダヤ教では数千年も昔から、亡くなった人の家族が「死人の棺を一晩見守る」・夜伽という通夜の儀式が行われてきた。
死者に見張り役が付き添い、聖書を朗唱してその魂を慰め 見えない悪霊から守るのだ。
見張るための適任者がいない場合は他人を雇い、付き添ってもらうこともできるのだった。
報酬目当てで遺体に付き添う男の恐怖!
若者ヤコブは、死人の棺を一晩見守るというユダヤ教の慣例にある役割を 高額の謝礼目当てで引き受けた。
しかし認知症を患う未亡人は その夜何かにひどく怯えており、ヤコブもまた恐るべき存在と対峙していることに気づく!
『ザ・ヴィジル』は、ジャンルとしてのオカルトホラーに、ユダヤ教やホロコーストの歴史を組み合わせた異色作。
ヴィジル・夜伽とは?
日本にも「夜伽」はあって、厳密には通夜終了後に葬儀の日の朝まで お線香を切らさず遺体と共に一晩過ごす習慣で、日本語の辞書でも「夜伽」については「通夜に死者のかたわらで夜どおし起きて過ごすこと」と出てきます。
夜伽は、現代日本では簡略化されている古の儀式とは言え、本作で描かれるユダヤ教はユダヤ教の中でもハイパー厳格、かつ伝統的な超正統派だったのです。
ユダヤ教 超正統派とは?
男性の格好は、もみあげとあごひげをとことん伸ばし、黒い帽子に黒いコートで黒いズボンという大変慎みのあるスタイルで統一。
女性のほうもまったく露出のない格好で、「髪を見せるのはふしだら」ということで頭髪を剃って地味目なカツラをつけていたりします。
ほかにも厳しい戒律は多々あって、未婚の男女は連れ添って歩くのがダメ、インターネットやテレビさえも禁止な場合もあるという超ハイパーな厳格派。
そして『ザ・ヴィジル 夜伽』には、ユダヤ教において悪霊とされる存在「マジキム」に憑りつかれた人間が登場します。
深夜の遺体警備!?
アメリカンホラー『エンドレス・エクソシズム』(2018年)では深夜の遺体安置所で、警備をする事になった主人公が悪魔祓いで死んだ少女の警備をするが、そこから不可解な怪異に襲われる恐怖が描かれています。
深夜の遺体安置所での設定というホラーは、映像の雰囲気からして不気味!
『ザ・ヴィジル 夜伽』は、「死人の棺を一晩見守る」というユダヤ教の慣例と合わせて、歴史的悲劇とオカルトをミックスした異色ホラー!
本作が長編デビュー!脚本・監督キース・トーマス
トーマス監督は本作を撮るにあたり、今現在のユダヤ人コミュニティをリサーチするため、主演俳優、プロデューサー、プロダクション・デザイナー、撮影監督を引き連れてユダヤ教徒のコミュニティに取材に行くという徹底ぶりで撮影に臨みました。
『ザ・ヴィジル 夜伽』は、「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」の上映作品です。
『ザ・ヴィジル 夜伽』のあらすじ
青年ヤコブは、かつては熱心な宗教家だったものの、ニューヨークの暮らしに馴染み宗教観を失っていた。
そして、無職のヤコブは収入もなく家賃の支払いにも窮していた。
ある日、ヤコブはユダヤ教の「超正統派」に所属するレブから、死者の傍らで夜間を過ごす「夜伽」の付添人になって欲しいと依頼される。
ヤコブは、高額の謝礼目当てで「夜伽」を引き受けることにした。
しかし、その夜 認知症を患う未亡人は何かにひどく怯えていた?
ヤコブは夜伽の最中に居眠りしたり、スマホで友人とメッセージのやり取りをしていたが、突如謎の異音がどこからか鳴り響き、照明器具は気味悪く明滅し始めた。
そしてヤコブ自身にも異変が起き始め、遺体である老人が体験したナチス・ドイツのホロコーストの悪夢がシンクロしていく。
キャスト
デイブ・デイビス、リン・コーエン、マーキー・ゴールドマン、メナシュ・ラスティグ、フレッド・メラメッド、ローガン・マクレーなどが出演。
じわじわと恐怖を煽る演出!
本作が長編監督デビューとなるキース・トーマスが陰影を活かした映像術で、見えないものへの恐怖をじわじわと煽る演出の冴えで魅せます。
本作は現代的な「スマートフォン」と「宗教ホラー」という一見噛み合わせの悪い2つの要素が見事にマッチしている恐怖シーンは必見!
『ザ・ヴィジル 夜伽』は、ダークな「オカルトホラー」と言うジャンルでありながら、鑑賞後 爽やかさを感じることの出来るオススメ作品です。
作品概要
製作国:アメリカ
監督:キース・トーマス
上映時間:88分
劇場公開日:2020年10月30日
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