本記事は、スタンリー・キューブリック監督の傑作SF映画「2001年 宇宙の旅」について深く掘り下げた記事です。
映画の原作はイギリス出身のSF作家アーサ・C・クラークの『2001 年 宇宙の旅』で、人類の進化論と未来の宇宙体験を描いています。
映画は、その壮大なテーマと革新的な映像表現により、SF映画史上に燦然と輝く傑作と称され、多くの映画ファンに愛されています。
また、映画の製作において、キューブリック監督は40社に及ぶ企業や研究機関から各科学分野に精通する有識者らを呼び寄せ、その集めた知識から厳密な科学的考証に基づき完璧に整合性のとれた映像を生み出しました。
この記事を読むことで、映画「2001年 宇宙の旅」のテーマとその製作背景についての理解を深めることができます。
- 映画『2001年宇宙の旅』のあらすじとその背後にあるテーマ
- 映画の象徴的なシーンとその意味、特に「モノリス」の存在とその役割
- 映画の製作背景とスタンリー・キューブリック監督の映画作りへのこだわり
- SF映画史における評価とその影響
1968年に劇場公開された「2001年宇宙の旅」の予告編動画は、こちら
完璧主義者=スタンリー・キューブリック監督による圧倒的な映像センスは、今なお我々に鮮烈な感動を与えてくれます! 製作50周年となる2018年には、名作映画の保存機関である国立映画アーカイブでニュープリント版のフィルム上映が行われました。
人類の宇宙的進化とリアルな近未来
クラークは、豊富な科学的知識に裏打ちされた宇宙の壮大さや近未来を舞台にしたリアルなSF作品群と仏教思想に共鳴した「人類の宇宙的進化」を壮大に描く特徴があります。
幼少期から宇宙の神秘に魅せられていたクラークは、天体観測で星を眺めることが大好きな少年だったそうで、彼が書いた『都市と星』『幼年期の終わり』『宇宙のランデブー』など、宇宙や科学への飽くなき追及心が作品に反映されています。
SF映画史上に燦然と輝く傑作
1968年に公開された『2001年 宇宙の旅』はSF史上に燦然と輝く傑作と称され、これまでに作られた映画の中で最も偉大で、最も影響力のある作品の一つとして知られています。
壮大な「ツァラトゥストラはかく語りき」の音楽が流れる中、争いに勝利したヒトザルが武器の骨を空に放り上げると、それがそのまま一瞬にして軍事衛星に変わる場面はあまりにも有名なオープニングシーン!
1991年には、米国議会図書館によって「文化的・歴史的・美学的に重要な作品」とみなされ、アメリカ国立フィルム登録簿に保存されることになりました。
先駆的な特殊効果と難解なイメージ
スタンリー・キューブリック監督により映画化された『2001年 宇宙の旅』は正にオープニングからSF映画らしい “未来”を期待したのに、冒頭から何の説明もないまま延々と約30分間 “原始”のお猿さんの行動を見せられるだけ・・・。
そこで描かれていたのは「進化」の序章であり、キューブリック監督は「人類の進化」のメカニズムを分かりやすく可視化させていたのです。
謎の一枚岩「モノリス」とは一体何なのか?『2001年 宇宙の旅』は、あまりにも抽象的で非常に難解であることから公開当初は多くの批判を浴びたが、その後再評価され 多くの映画ファンに愛されるSF映画の名作となったのです
完璧主義の鬼才 スタンリー・キューブリック
その異常なまでのこだわりと徹底した映画作りで、完璧主義者として恐れられたが彼の作品は世界的な評価を受け、多くの著名な監督からも絶賛されました。
『2001年宇宙の旅』の製作でも、キューブリックは40社に及ぶ企業や研究機関から各科学分野に精通する有識者らを呼び寄せ、その集めた知識から厳密な科学的考証に基づき完璧に整合性のとれた映像を生み出しました。
さらに、まだCG技術も存在しない当時に大がかりな宇宙船セットやミニチュアを使った特撮を用い、フロント・プロジェクションと呼ばれる革新的な合成技法を駆使したのです。
クールで美しい映像とクラシック音楽との融合
本作は知的言語化を避けた極端に少ないセリフや、長回しのカメラワークがクールで美しい映像を作り上げています。
ヨハン・シュトラウス2世、アラム・ハチャトゥリアンなどの「ツァラトゥストラはかく語りき」「美しく青きドナウ」をはじめとするクラシック音楽が多数使用され、名曲の数々と 壮大で美しい映像との融合は、もはや芸術的とも言えます。
製作50周年・記念上映
製作50周年となる2018年には、10月6日から国立映画アーカイブでアンレストア70ミリ・ニュープリント版のフィルム上映が行われ、同月19日からはIMAXシアターで2週間限定公開されました。
「2001年 宇宙への旅」のあらすじ
400万年前の人類創世記・・・人類の祖先にあたる猿人たちは、飢えに苦しんでいた。
ある日、一匹の猿人は 謎の黒石板 “モノリス”に接触し 「骨」という武器を使うことを覚え、ついには相手のリーダーを殺し生物の頂点に君臨する。
時は過ぎ 21世紀・・・人類は骨という道具が形を変え、宇宙船まで発達した。
月への開発が進む中、人類は月の表面に奇妙なものを発見する・・・それは黒い石板?
そして2001年 “モノリス”の謎を究明する為、5人のクルーは初の木星探査へと旅立つ。
しかし、宇宙船を制御するAIの「HAL 9000」が突如反乱を起こす。
死闘の末、生き残ったボーマン船長は “モノリス”に遭遇し、人間の知識を超越した領域へ吸い込まれる・・・気が付くと、そこは真っ白な部屋の中。
彼はそこで、人間としての命を終えようとした時 “スターチャイルド”として転生し、地球という惑星を見下ろすのだった。
キャスト
キャストは、ケア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスターほか。
『2001 年 宇宙 の 旅』 解説
人類の進化
人類の進化は、一度赤ん坊に生まれ変わることから始まるというニーチェの理論があります。
これは、人類が進化の行き着く先として「超人」になるという考え方に基づいています。
映画の解釈
映画”2001年宇宙の旅”の中で、モノリスと呼ばれる黒い板は宇宙人(もしくは神、創造主)が置いたものとされています。
その目的は完全には理解されていませんが、一部の解釈では、モノリスに触れることで猿からヒトになるための知能が授けられたとされています。
また、月に埋まっていたモノリスの信号によって、ディスカバリー号のボーマン船長が木星へ行くことになり、そこでエイリアンと出会い、進化するというストーリーが描かれています。
映画の影響
映画”2001年宇宙の旅”は、その視覚的な美しさと深遠なテーマにより、多くの人々に影響を与えてきました。
例えば、ロックの世界では、レッド・ツェッペリンの「プレゼンス」やザ・フーの「フーズ・ネクスト」のジャケットにモノリスが使用されています。
また、デヴィッド・ボウイは映画の最後に登場するスターチャイルドを賛美した歌「スターマン」を歌っていました。
映画の評価
映画”2001年宇宙の旅”は、その独特のストーリーテリングと視覚的な美しさにより、観る人々に深い印象を与えています。
その一方で、映画の意味は全く分からなかったという人もいるほど、その解釈は観る人それぞれによって大きく異なります。
そのため、映画の解釈を語ることは、多くの人々にとって興味深い話題となっています。
詩的で哲学的な作品
冒頭で猿人が上に放り上げた「骨」が宇宙船に変わる一瞬のシーンで、人類の進化と歴史を表現したキューブリック監督の演出はショッキングとさえいえる素晴らしい映像センス!
元々カメラマン出身であるキューブリックが、こだわりにこだわり抜いた映像の数々は、現代のCGを駆使したアルフォンソ・キュアロン監督の宇宙SF『ゼロ・グラビティ』などと比べても全く遜色ないものとさえ言えます。
本作は哲学的で難解なイメージが付きまとっている作品ですが、難しい事は考えず“2001年 宇宙の旅”を、光と色と音が織りなす「詩的な作品」として鑑賞しましょう!
作品情報
製作国:アメリカ
上映時間:140分
日本公開日:1968年4月11日
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